
貧困をなくすために“立ち上がる”世界同時開催アクション「
STAND UP TAKE ACTION」の一環として、
ミレニアム開発目標(MDGs)や世界の貧困の現状、そして問題解決に取り組むNGOの取り組みを紹介する「STAND UP CAFE(スタンド・アップ カフェ)」。7月6日を皮切りに全9回シリーズで、MDGsの各目標を取り上げてきたトークイベントの最終回を10月1日(金)に行いました。
最終回のテーマは、MDGsの目標8「世界の一員として先進国『も』責任を果たそう」です。2015年を達成期限とするMDGsの進捗を振り返り、達成に向けた取り組みを議論するために、9月20日(月)から22日(水)にニューヨークで国連MDGsレビュー・サミットが開催されました。8割以上の参加国が国家元首を派遣する中で、日本からも菅直人首相が参加しています。このサミットで何が議論されたのでしょうか。政府代表団の一員としてサミットに参加した、
財団法人家族計画国際協力財団(ジョイセフ)の矢口真琴さんのお話を聞きこうと、定員を上回る参加者が会場に詰めかけました。
日本政府は、菅首相を筆頭に、就任したばかりの前原誠司外務大臣などを含む「数え切れないほどの」大人数からなる代表団をMDGsサミットに派遣しました。矢口さんはNGOの代表として、
特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)の大橋正明理事長とともに政府代表団の一員としてニューヨーク入り。3日間のMDGsサミットに参加しました。
「本会議場では、朝から晩まで各国の首脳によるスピーチが行なわれます。同時並行で実施されるのが、6つのラウンドテーブルです。各日2テーマずつ行われ、前原外務大臣は“最脆弱層の特別なニーズ”のテーマで行われたラウンドテーブル5でスピーチをしました。これらの他に、国際機関やNGOなどが主催するサイドイベントが85件ほど行われました」。
矢口さんの現地での行動をお伺いしました。「会議場内に入るためにはパスが必要なのですが、各国政府に割り当てられたパスは非常に少なかったのです。そのため、私は主に
国連のWEBキャスト(※)で議論を追いかけながら、いくつかのサイドイベントなどに参加しました」。
Women Deliverによる家族計画や母子保健などを考えるイベント、屋外の特設ステージでの
STAND UP TAKE ACTION関連イベント、保健MDGs達成のための統合的アプローチを事例に基づいて検証するボツワナ政府と
Global Health Councilの共催イベント、潘基文国連事務総長やミュージシャンのボブ・ゲルドフ氏も参加したChampions of Global Healthなど、専門の母子保健に関係するものを中心に足を運んだそうです。
潘基文国連事務総長主催のEvery Woman, Every Childでは、MDGs達成に向けた進捗が一番遅れている目標4と5を議論。会議では、中国の温家宝首相、米国のクリントン国務長官、オーストラリアのラッド外相、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツ氏、国際NGOの代表など、さまざまなステークホルダーが達成に向けた取り組みを発表したそうです。日本も、「68万人の女性と1130万人の子ども命を救うために、5年間で50億ドルを国際保健政策に拠出」「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)に当面8億ドルを拠出」することなどを含む「菅コミットメント」を発表しました。これは、貢献金額では最大のものです。しかし残念なことに、菅首相の参加が実現しなかったこともあり、他の国や機関に注目度でやや及ばなかったようです。
MDGsサミットの印象はどのようなものだったのでしょうか。「一言で表現すると、“お祭り”です。ただし、お祭のままで終わらせてしまうのではなくて、5年後に振り返ったときに“このサミットがMDGs達成への転換期だったね”と言えるように、この国際公約の実現をしっかり見届けなくてはと思っています」「日本のコミットメントは政府開発援助(ODA)が減っている現状を考えると大きな金額だと思います。でも、十分ではありません。例えば、母子保健分野で1年間に必要な金額は250億ドル。あと120億ドルの資金が必要です。今後も働きかけを続けていきます」。
貧困や開発についての会議で約束されるさまざまな資金的なコミットメントは、絵空事のようにも聞こえます。しかし、途上国と先進国のパートナーシップによって貧困の半減を目指すMDGsを達成するために、先進国には資金の拠出が期待されていることも事実。今回のコミットメントが守られるよう、先進国の私たちには見守る責任があります。加えて重要なことは、貧困削減に効果的な資金の活用方法を追求することです。MDGsサミットに向けて、国連がグッド・プラクティス(成功事例)を収集したほか、サミット中もテーマが具体的に絞られているラウンドテーブルなどでは具体策の議論も多く行なわれたといいます。
「2015年までに貧困を半減することを約束したMDGsは、世紀の(Millennium)約束であり、最低限の(Minimum)、達成しなくてはならない約束です。MDGsが達成されても貧困がなくなる訳ではありませんから。10年が経過し、政府だけではなく国際機関や企業、NGOなど多様な組織や個人の参画が進んできたことによる相乗効果を生かしつつ、達成のためのさらなる努力を続ける必要があると思います」。参加者からの質問に答えつつ、締めくくりました。
※インターネット放送。国連ホームページ上で視聴できる。
