2014.6.26
6月20日(金)、文京シビックホール会議室にて、第9回「ポストMDGsナイト・カフェ」が開かれ、「税と社会と格差是正」をテーマに、近年の国際的な税や開発の動向と先進国の社会的課題としての税の2つを結びつけて考えていこうとのイニシアティブのもと、活発な意見交換が行われました。
今回のイベントの講師として、オックスファム・ジャパンにてアドボカシー・マネージャーを務める山田太雲さん、国際会計事務所KPGMでの税務コンサルタントを経て、現在は国内最大手の企業グループにて国際税務の制度構築などを担当する宮嵜雄仁さん、年越し派遣村村長を経て、震災ボランティア連携室長などを務めた社会活動家/法政大学教授の湯浅誠さんの3人にお越しいただき、それぞれ「税と公共性」、「企業が納税を逃れる理由」、「民主主義と税」について講演をしていただきました。
はじめに、司会の西あい氏(開発教育協会)がミレニアム開発目標(MDGs)の進捗について紹介。そして、MDGs達成期限である2015年に向けてさらなる推進が必要であると呼びかけ、国際的な貧困・開発問題の意識の中で税について考察していく、という議論の基調を打ち出しました。
◆山田太雲さん(
特定非営利活動法人オックスファム・ジャパン)

講師の講演に入り、はじめに山田さんより、「財源としての税」が社会の基本的運営に不可欠であるとの認識とともに、税制度の公共性・公平性のバランスの難しさについてお話をいただきました。特に開発途上国においては、税金の「不足」「逆進化」「不公平さ」が蔓延し、開発の大きな障害となっており、さらに税の不公正がさらなる経済格差や民主制度の形骸化をもたらしていると報告がありました。このような租税制度に起因する様々な負の影響を打開するため、ポスト2015年開発目標(ポストMDGs)に「租税正義」の導入が必要であると訴えました。
◆宮嵜雄仁さん(税務コンサルタント、国際税務専門家)

宮嵜さんからは、「企業目線」から浮き彫りになる税制度の課題についてお話をいただきました。近年耳にするようになってきた「タックスヘイブン」。これは、租税回避地とも呼ばれ、多国籍企業が納税による利益損失を避けるために利用する低税率、または非課税国のことを指します。企業の社会的責任(CSR)の観点から国際的に大きな議論となっていますが、利益追求を目的とする企業としてはタックスヘイブンの利用は当然であり、企業が各国に支払った税が実感できる形で企業に還元されない限り、この納税回避行動を止めることは難しいという考えを示されました。
◆湯浅誠さん(
社会活動家)

最後に湯浅さんからは、日本国内の税の課題についてお話をいただきました。少子高齢化が進む日本にとって、租税徴収は社会運営の肝要であるにも関わらず、国民の「税の使い道に対する不安」がベースとなって、その運用がうまく機能していないとの指摘がありました。データによれば、スウェーデンなどの日本同様に高い高齢化率の国々は、高い税率に基づいた手厚い社会保障費の給付を行っているそうです。現在圧倒的に財源の足りない日本は、赤字国債でその分を埋めたり、NPOや地域ネットワークが政府の手の届かないところで活動したりする状態が続いています。この状況打開のためには、累進性が高く、所得再分配機能を備えた税制度の実施、そして長期的には「国民の税に対する意識改革」が必要であると訴えました。
講演の後、3人の講師の中での意見交換と会場に開かれた質問会が行われ、税について考えるということは、「どういう社会を築いていきたいのか」を考えることであり、私たち一人一人が主体性をもって税と向き合い、日々考えていくことがより良い社会構築の第一歩であることを参加者同士で確認することが出来ました。
(「動く→動かす」インターン 岡田)

ナイト・カフェイベント全体の様子 講師陣のディスカッションの様子
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